サステナビリティ

エクセディグループの
サステナビリティ活動を
ご紹介いたします。

気候関連財務情報開示
タスクフォース(TCFD)
提言に
準拠した情報開示

エクセディグループは国際的な課題である「地球温暖化防止」に対し、2050年までにカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)を達成することを目標に、省エネルギー活動の推進、再生可能エネルギーの導入、次世代電動化商品や未来商品の開発に取り組んでおります。また、パリ協定及び気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言への賛同を表明し、気候変動が事業に与える影響とそれによるリスクと機会を複数のシナリオに基づいて分析の上、経営戦略や財務計画へ反映させ、戦略のレジリエンス(適応して生き延びる力)の強化を図っています。

ガバナンス

エクセディグループは気候変動を重要な環境課題と認識し、経営会議及び取締役会で審議の上、脱炭素社会づくりに貢献することを長期ビジョンの一つに選定し、気候関連のKPI(重要経営指標)を設定しております。また、同ビジョン及びKPI達成に向け、サステナビリティ活動計画を策定、進捗管理等を行う会議体としてサステナビリティ会議を設置しています。同会議の議長は代表取締役社長が務め、全執行役員(含む、海外駐在)及び常勤監査役が出席し、年2回開催しています。同会議では中長期目標の策定や法規制・利害関係者のニーズ等から必要とされる対応について審議・決定を行い、事業に重要な影響を及ぼすと判断された案件については経営会議や取締役会で審議しています。加えて、サステナビリティ活動を推進する実働部隊としてサステナビリティワーキンググループを組成しております。同グループの議長は代表取締役専務執行役員が務め、構成員は各本部から選出されており、全社横断で同活動を推進しています。

サステナビリティ活動組織

戦 略

シナリオの想定

気候変動がエクセディグループの事業に及ぼす潜在的な財務影響の把握、気候関連のリスクと機会を特定するために、国際エネルギー機関(IEA)World Energy Outlook や 2° Investing Initiative(2℃投資イニシアティブ)などの外部シナリオをベンチマークとして参照しました。また、自動車産業に係るシナリオ分析も確認し、自社の長期的な事業環境認識と照合しながら総合的にシナリオを想定の上、シナリオと自社長期戦略との差異分析により気候関連のリスクと機会を洗い出しました。

シナリオの定義は、グローバルベースの全事業を分析対象とした上で、移行リスク及び物理的リスクの2軸に対し、IEA NZE、IEA STEPS 及び 4℃シナリオ(温暖化対策があまり進まないケース)で分類しました。

移行リスク

パラメーター

2023年

STEPS 2.4℃

NZE 1.5℃

出 所

炭素価格

炭素価格
(US$/t-CO2

-

EU
2030年 140
2040年 149
2050年 158

先進国
2030年 140
2040年 205
2050年 250

IEA "WEO2024"※5

エネルギー
ミックスの
変化

電気料金
①石炭
②太陽光
(US$/MWh)

-

USA ① ②
2023年 105 55
2030年 165 35
2050年 n.a. 25

USA ① ②
2023年 195 55
2030年 n.a. 30
2050年 n.a. 25

CO2換算指数
(t-CO2/MWh)

0.458

2030年 0.312
2035年 0.219
2040年 0.164
2050年 0.111

2030年 0.195
2035年 0.050
2040年 0.003
2050年 -0.004

原材料価格

鉄価格
①従来工法
②画期的工法
($/t)

2023年
 ①510-630
 ②該当無し

2030年
 ①470-560
 ②650-870
2050年
 ①470-560
 ②650-870

2030年
 ①550-750
 ②730-910
2050年
 ①730-850
 ②680-830

顧客行動
の変化

EV販売台数

2020年 4%
2022年 14%
2023年 約20%

2030年 45%
2035年 55%

2035年 100%

移行リスク

パラメーター

2016年

4℃ ※3

2℃(1.5℃)※4

出 所

顧客行動
の変化

ガソリン
ディーゼル
車両販売台数

現状(=100%)

2050年 現状の100%
LCT ※1

2050年 現状の90%減
ACT ※2

2ii「The Transition
Risk-o-MeterReference
Scenarios for
Financial Analysis」
※6

物理的リスク

パラメーター

2016年

4℃ ※3

2℃(1.5℃)※4

出 所

平均気温の
上昇

空調コスト
(US$/人・年)

約19

2030年 約30
2050年 約60

2030年 約30
2050年 約35

IEA
"The Future of Cooling"

異常気象の
激甚化

洪水発生頻度

2018年 (=100%)

2040年 400%

2040年 200%

国交省
「気候変動を踏まえた
治水計画のあり方提言」
2019

台風・サイクロンの
発生

26個/年発生

頻度は減少、威⼒は増加する
可能性がある

気象庁・環境庁

※1:Limited Climate Transition、
※2:Ambitious Climate Transition、
※3:温暖化対策があまり進まないケース
※4:温暖化対策が加速するケース(一部、1.5℃シナリオ)、
※5:International Energy Agency "World Energy Outlook"
※6:2° Investing Initiative(2DII)

気候関連のリスクと機会の特定

エクセディグループの長期戦略の前提となる事業環境認識と上記シナリオの差異分析を行い、事業に与える潜在的な財務影響が大きいと考える項目を重要項目 として洗い出した結果、以下となりました。

【時間軸】短期 0-2年、中期 3-9年、長期 10年以上
【影響度】エクセディグループの事業に与える影響度

主なリスク

重要項目

財務上の潜在的な影響

時間軸
影響度

対応

温室効果ガス
排出に対する
政府の規制強化

再エネ導入による直接費の増加

  • 温室効果ガス排出量削減目標(2030年度)は
    2019年度比 ▲46%
    施策は省エネ(年▲1%)活動 & 再エネ導入
  • 省エネ活動が計画通りの場合2030年度における
    再エネ費用試算は13.1億円/年
    <2030年度炭素価格:140US$/t-CO2

中期
高い

  • 2023年度から
    インターナルカーボンプライシングを導入
    (JPY11,000/t-CO2、2024年8月末時点)
  • 日本内外における再エネをはじめ、
    温室効果ガス排出量の削減手法の研究&導入

2023年度の主な導入実績&削減効果(t-CO2/年)
  投資額79.8億円

  • ダイナックス、バイオマスボイラ導入:
    3,501t(投資額7億円)
  • エクセディタイランド、太陽光パネル設置:
    1,416t(投資額1.2億円)
  • ダイナックス、ソーラーカーポート・
    太陽光発電導入:1,580t(投資額7.4億円)
  • エクセディ、加圧炉廃止(移転):
    481t(投資額64.2億円)

既存製品に係る
規制強化&
市場変化

内燃機関車の販売停止や
電気自動車への移行の加速に伴う売上減少

  • 2iiシナリオでは内燃機関車売上 90%減
    <2050年度>
  • エクセディグループ売上高中、
    内燃機関向けは89%であり、
    2050年度の売上高への影響額は▲約2,500億円

中期
高い

  • 日本内外における内燃機関車関連の
    規制情報、顧客動向情報の収集
  • プロジェクト制導入による新事業の育成、
    更なる創出
      2024年4月、6プロジェクト組成
      メンバー 71名/人件費 4.5億円、
      2030年度/新事業売上目標 1,000億円

開発中の電動化製品&量産/限定販売開始時期

  • ドローン:2023年度(プロペラ)
  • スマートロボット:2025年度
  • 2輪/3輪BEV用CVT駆動ユニット:2024年度
  • 電動アシストパレットトラック:2024年度
  • BEV用ワイドレンジドライブシステム:
    2028年度

サイクロン・洪水等
の異常気象の
深刻化&頻度上昇

工場操業停止・サプライチェーン寸断による
売上減少

  • 国交省「気候変動を踏まえた治水計画の
    有り方提言」では、2040年度に
    洪水発生頻度が2倍(2℃)~4倍(4℃)
  • 洪水発生の可能性が高い日本&アジア
    (全生産の69%)で操業停止(5日間)した場合、
    売上高への影響額は▲44億円

中期
高い

  • ハザードマップ活用によるリスク評価の実施
  • リスク評価に沿った対策の実施
    ~2020年度、最大リスク拠点の移転完了
    ~止水板の設置等 
  • 協力企業を含めた事業継続計画の策定
移行リスク

移行リスクについては、温室効果ガス排出に対する政府の規制強化、既存製品に係る規制強化&市場変化がエクセディグループの事業に与える財務上の潜在的な影響度が高いと評価しました。また物理的リスクでは、異常気象の深刻化&頻度上昇が与える上記影響度が高いと評価しました

【時間軸】短期 0-2年、中期 3-9年、長期 10年以上
【影響度】エクセディグループの事業に与える影響度

主な機会

重要項目

財務上の潜在的な影響

時間軸
影響度

対応

より効率的な
生産&物流
プロセスの活用

より効率的な生産による
エネルギーコストの低減

  • 長期ビジョン/温室効果ガス排出量削減
    (2019年度比、2030年度▲46%削減)の
    施策の一つは▲1%削減/年の省エネ活動
    (2030年度▲11%)。
    同活動で12.9億円のコスト削減を想定。

中期
高い

  • 省エネ活動の継続
  • 更なる生産効率化に資する
    生産技術開発の促進
  • 既存主力製品の売上予測を見据えた
    最適な生産体制の検討

上記活動により2023年度において
4.1億円/年のコスト削減を実現

低排出量製品の
開発及び拡販

HEV向け製品の需要増に伴う売上増加
(日本&中国)

  • 欧米で内燃機関車への規制が厳しくなる中、
    日本&中国ではHEV(ハイブリッド車)は
    規制対象外
  • 2030年度の世界HEV販売台数は
    34.8百万台(2023年度 18.1百万台)
    脱炭素化に資するフルHEV用商品(ダンパー)、
    マイルドHEV用商品(トルクコンバータ・
    フライホイール・摩擦材・クラッチ等)の
    技術開発により、2030年度における
    HEV向け製品の売上への影響額は
    121.9億円を想定

中期
高い

  • 2021年7月策定の
    「脱炭素貢献製品の売上高比率」目標を
    2024年1月に引上げ、
    HEV&BEV向け製品の創出&拡販を加速
    引き上げ後の同目標は
    2030年度21%、2040年度79%、2050年度83%
  • 2023年6月、HEV用ダンパーの生産ラインを
    本社工場に新設(投資金額4.8億円)。
    本製品受注は2022年度の413千台から
    2027年度には600千台まで伸びる見込

研究開発及び
技術革新を
通じた新製品の
開発

BEV向け等 電動化製品の需要増に伴う
売上増加

  • 足元、減速傾向が見られるものの、
    中長期的なBEV化の流れは変わらず、
    2030年度の世界BEV販売台数予測は
    42百万台(2023年度12百万台)。
    BEV用ワイドレンジドライブシステムの
    技術開発により、自動車向け電動化製品を
    開発中
  • 自動車向け以外でもドローン・
    スマートロボット・電動2輪&3輪向け等
    新製品の開発に取り組み、
    2030年度における新製品の
    売上への影響額 1,000億円を目指している

中期
高い

  • 2021年7月に
    「新製品開発の研究開発費比率」をKPI化
    同比率を2030年度70%、2050年度90%とする目標
  • 2024年1月に「新製品の売上高比率」をKPIに追加
    同比率を2030年度30%、2040年度86%、
    2050年度94%とする目標
  • 新事業の育成・創出体制を強化
    プロジェクト制の導入、
    インド&英国にR&Dセンターの設置、
    シリコンバレーオフィスの増員
    2023年4月以降、モータやドローン関連技術等
    必要な知見を保有するスタートアップ等
    9社に対し、計58億円を出資

ESG評価による
株価上昇

ESG評価機関における評価向上に伴う
PBRの改善、時価総額の増加

  • 国連/PRI(責任投資原則)署名機関は
    4,000以上、総運用資産は120兆米ドル。
    同機関は投資分析と意思決定プロセスに
    ESG課題を組み入れており、
    ESG評価機関における評価向上は
    投資家の株式保有インセンティブの一つ
  • 企業価値(≒PBR)向上取り組みの一環として、
    ESG評価の向上を通じたESG戦略を
    推進しており、PBRを現状
    (0.66倍、時価総額 1,557億円)から1倍にまで
    改善できれば、時価総額 約800億円の
    増加が期待できるもの

中期
高い

  • FTSEスコアやCDP評価の向上活動を通じた
    ESG戦略を推進
    FTSEスコアは3.7から4.3に向上、
    CDP評価はBを維持
    統合報告書を初めて発行した
    2023年2月以降、当社株価(+81%)は
    日経平均(+37%)をアウトパフォーム中
  • 2024年4月、ESG・IR推進部を新設し、
    ESG戦略の更なる推進を企図(経費31百万円)
主な機会

機会については、より効率的な生産&物流プロセスの活用、低排出量製品の開発及び拡販、研究開発及び技術革新を通じた新製品の開発がエクセディグループの事業に与える財務上の潜在的な影響度が高いと評価しました。

経営戦略への影響

前述のリスクと機会の特定により認識した世界的なカーボンニュートラルの流れ、BEV化の進展、内燃機関車向けビジネスの縮小を踏まえ、経営会議及び取締役会にて審議し、2024年4月に中長期戦略及び中期経営計画「変革/REVOLUTION2026」を策定・公表しました。

中長期戦略は事業戦略・財務戦略・ESG戦略から構成されており、2030年度に向けた事業戦略の骨子は事業ポートフォリオの転換となっております。現行ビジネスにおける稼ぐ力を改善し、新事業創出に人財&資金を集中投入していく戦略であり、2030年度目標は売上高3,300億円、営業利益300億円、ROE8%、新製品売上高比率30%となっております。

また、中期経営計画「変革/REVOLUTION2026」は2030年度を見据えた2026年度迄の中期計画であり、同3年間で時間軸・取り組み方法・ビジネスモデル等を変革する計画です。本計画における事業戦略の骨子は①痛みを伴う構造改革、②生産体制の最適化、③新事業の創出・育成であり、③については更に加速させるべく、プロジェクト制の導入、インド&英国へのR&Dセンターの設置、シリコンバレーオフィスの増員を実施しました。また、ESG戦略の骨子は外部評価機関からの評価向上活動を通じたサステナビリティ活動の推進であり、その推進部署としてESG・IR推進部を2024年4月に新設しました。

財務計画への影響

財務計画への主な影響は、①痛みを伴う構造改革による減損損失の計上及び②新事業創出・育成に係る投資の拡大です。本件についても経営会議及び取締役会にて審議の上、進めております。

①についてはBEV化が進む中、日本&中国のトルクコンバータ事業が急激に縮小していくことが明らかとなったため、2023年度決算において減損テストに基づき、AT事業のトルクコンバータ用の事業用資産に係る減損損失319億円を計上しました。本件により、2024年度以降におけるAT事業の減価償却負担を軽減し、同事業の収益力を変革させる計画です。

②については新製品の研究開発費比率に加え、新製品の売上高比率をKPIに追加設定し、同目標を2030年度30%、2040年度86%、2050年度94%としました。それに伴い、2024年度‐2026年度のキャピタルアロケーションにおいて成長投資300億円を計画しており、戦略投資としてM&Aへの機動的な資金投下、R&D投資として新製品開発への人財&資金の集中投入を行っていきます。M&Aについては2023年4月以降、モータやドローン関連技術等の必要な知見を保有するスタートアップ等 9社に対し、計58億円を出資し、人財も派遣して、新事業の創出・育成を推進しております。加えて、新事業創出活動を強化すべく、2024年4月からプロジェクト制を導入しており、それに伴い、人件費予算4.5億円を計上しております。

リスク管理

エクセディグループではリスク管理の行動指針を、非常事態に対する未然防止、被害最小化のための事前対策、事前準備を整えることとし、確実な実行へと繋げる為、リスクを評価・特定の上、リスク管理を行っています。安全衛生・環境保全活動、事業継続マネジメント活動等に関し、発生頻度と影響度、取り巻く環境などから、主要なリスク項目を抽出。それぞれに責任部署や各リスクの影響度、発生の要因、事前予防策等を明確にし、管理体制の強化に取り組んでいます。

気候関連リスクについては、サステナビリティ会議を中心にシナリオ分析、リスクの評価・特定、対応策の進捗を管理しており、主なリスクへの対応状況は次の通りです。内燃機関車の販売停止等に伴う売上減少リスクについては、経営会議及び取締役会で議論し、長期ビジョンの策定や製品開発体制の強化に繋げています。政府の規制強化に伴う再エネ導入による直接費の増加リスクについては、サステナビリティワーキンググループにて再エネ選択肢情報の収集をはじめ、対応策の研究・検討を行っています。洪水等によるサプライチェーン寸断リスクについては、代表取締役社長・代表取締役専務執行役員・常務執行役員・常勤監査役によって構成されるリスク管理委員会において、サプライヤーを含めた事業継続計画を議論・推進しています。

指標と目標

エクセディグループでは2050年迄のカーボンニュートラル達成に向けた活動を進めており、気候関連のKPIとして「NET GHG(温室効果ガス)排出量削減率」を設定の上、2030年度及び2050年度目標を以下の通り策定し、サステナビリティ会議でその進捗状況を確認しています。

指標

NET GHG排出量削減率
スコープ1(直接排出)+2(間接排出:電気等)

目標

2030年度 ▲ 46% <2019年度比>
2050年度 ▲100% <同上>

実績
(2023年度)

削減率 ▲20.7% <2019年度比>
排出量(千t-CO2
スコープ1:31.2, スコープ2:163.5, スコープ3:1,573.4

 

以上のように、エクセディグループでは気候変動を重要な環境課題と認識し、取締役会やサステナビリティ会議をガバナンス組織、サステナビリティワーキンググループを実務推進組織と位置付け、KPIを定め、サステナビリティ活動の推進を行っています。また、当社を取り巻く状況を複数のシナリオに基づいて分析し、重大なリスク及び機会を特定し、気候変動が事業に与える潜在的な財務及び戦略上影響を試算の上、経営戦略や財務計画に反映させています。特に、主なリスク及び機会への対応策については、長期ビジョンや連結中期経営計画に織り込み、これらの着実な実行を通じて、エクセディグループの製品需要等への影響に対するレジリエンスの強化を図っていきます。